一昨日7日、観光立国スペインのドル箱アルハンブラ宮殿が臨時休館となった。名付けてEUモロッコ首脳会議が貸切。確かにモロッコ人の先祖が建てたアルハンブラ宮殿がその舞台に相応しいのは分かるが、既に入っていた予約は一方的にキャンセル。日本語情報センタ-にやって来た日本人旅行者の中にも予約しながら観ずに帰った人がいたが、当局はお構いなし。
そこまでして一体EUが寄ってタカってモロッコ一国に何の吊るし上げかと思うところだが、まずはやはり金の話。
EUの大企業に隣国(スペインにとってはだが)モロッコに投資を促す談話が続く。サパテロ首相に拠ればスペインの経済危機脱却はもうすぐだからだそうだが、同じ日の新聞記事には大手銀行上層部のまだまだ底は突いていないとのコメント。こっちの方が信憑性がありそうだ。
ついでにモロッコ国内の民主化の要望。EUと付き合いたければもっとましな政治形態にしろと言うことらしい。今でも貧困に喘ぐモロッコ人が原付ボ-トでスペインの地中海岸に仕事を求めて乗り付ける。北朝鮮よりはましだろうが、これだけでもどう言う国か読者も想像が付くだろう。
一方議題に上らなかったのがモロッコの西サハラ問題。筆者が学生時分までは世界地図のモロッコの左横にスペイン領サハラなる植民地があった。独裁フランコ将軍の死でどさくさに紛れてモロッコがスペイン軍を追い出して以来モロッコ領なのだが、実はサハラ族と言ってモロッコ人とは民族が違い、今に至るまでモロッコ政府から差別政策を受けている。今回腫れ物には触れない会議ではあったが、地元グラナダに住んで(亡命して!?)いるサハラ系モロッコ人が市内をデモ。
もう一つのデモはスペインの農業従事者。スペインはモロッコから大量の農産物を買っている。25年位前まではスペインの安い農産物を積んだトラックがフランス国境を越えるとフランスの農民が待ち伏せにして襲撃していたが、時代は流れて同じ図式がスペインとモロッコにも出来上がってしまっている。しかし、こうしなければモロッコもまた自国沖合いの世界有数の優良(有料)漁場で操業するライセンスをスペインの漁船に与えはしない。漁業のために農業を交換カ-ドにするつもりか、この野郎と言う訳だ。気持ちは分かる。
これは一例だが、ある分野の問題がそこだけで済む問題ではないところが国際政治問題だろう。北方領土も同じかも知れない。
人に思慮があれば怒りを遅くする。その人の光栄はそむきを赦すことである。-----或る昔の偉い人
筆者の予想では今後EU+北アフリカの地中海共同体とでも言うべき経済ブロックが出来上がるはずです、遅かれ早かれ。
マグレブ諸国(北アフリカ)自体はEUにとって旧植民地の取るに足らない弱小国ばかりですが、イスラム国家ですから頭に血が上ると何をしでかすか分からないのでなだめる必要があります。なだめるには金が一番。また、第二次大戦後これらの旧植民地から移民が相次ぎ、今では孫の世代。もちろん、ドイツ人、フランス人、イタリア人、スペイン人ですがイスラム教徒。なだめなければ獅子身中のテロリストになるかも。なだめなければ街でアルカエダにスカウトされて、いつの間にかアフガニスタンやイエメンで工作員の特殊訓練を受けていた例もあります。だからこそ地中海経済共同体で丸め込む必要があります。こう言うのを政治家は政治的思慮とでも言うのでしょう。
人に思慮があれば当然怒りを遅くするのでしょうが、また、人に思慮があれば植民地支配も3K嫌い(故に移民がやって来る)もサハラ族抑圧も無かったはずです。
誰でもどこの国でも思慮の無さを美辞麗句で上塗りすれば必ず歪みが来ます。政治家の美辞麗句の馴れ合いの協定ならなお更。しかし、そむきを赦すことこそが人の光栄だとすれば、これこそ真の思慮かも知れません。
日本もスペインも思慮無く怒りをぶちまけたために起こる事件が後を絶たないとすれば、残念ながらこのことは反面教師で証明されていると言わざるを得ません。
2010-03-08
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