2010-12-27

453 13年振りのアルハンブラ宮殿 28-12-2010(火)

 一昨日日曜日、日本からやって来た友人と13年ぶりにアルハンブラ宮殿に行きました。さすがにユネスコの世界遺産だけあって、ほとんど変わっていませんでした。ただ、筆者の方が老眼で観光ガイド時代頻繁に訪れていた当時ほどすんなり見えなかったことに時の流れを感じました。
 もう一つは知った顔の係員が一人しかいなかったこと。それもかなりずるむけに禿げ上がっていて、良く見ないと分からないほどの老けぶりでした。やはり年月は経ったのですね。 
 その代わりと言いますか、新しい顔ぶれになっていたのは仕方がないとして、宮殿内フラッシュ禁止でフラッシュ焚き放題の多くの観光客の横で一切何も言わない係員!? 何人かいましたが、見事に誰も何も言わなかったですね。以前は結構注意していましたが、旅行者が知らずにフラッシュを使うのは仕方がないとしても、 スペイン人は元来無責任感が強い人が多いのですが、時の経過と共に一層磨きがかかったと言う印象を持ちました。

 自分の畑を耕す者は食料に飽き足り、虚しいものを追い求める者は貧しさに飽きる。-----或る昔の偉い人 

 カトリック社会のクリスマスは1月6日東方三賢士の日のクリスマスドリ-ムジャンボ宝くじ第二弾まで。まだまだ始まったばかり。年末年始もクリスマスの一環です。
 円高ユ-ロ安とは言え、一枚買うだけで20ユ-ロ(約2300円)で当たれば一等数億円!? なるほど、なるべく働かずにハイリスクハイリタ-ンで総てを賭けたくなるはずです。世界的大不況で、国家財政破綻一歩手前のご時世だからこそ、ますます協奏曲は最終楽章に向って盛り上がって萎(しぼ)みそうな予感がします。
 本当は虚しいものを追い求めているのに自分の畑を耕していると錯覚して人間が圧倒的大多数の社会に我々は生きているのかも知れません。食料に飽き足りたいとは思っているのでしょうが・・・。
 それを宗教の仮面でやることが、一層虚しさと貧しさに拍車を掛けている・・・。筆者にはそんな実感がする欧米のキリスト様を利用するとんでもクリスマスの年の瀬です。 


 

427 マヌエル・カ-ノ先生のギタ-吟味(1) 28-12-2010(火)

 良いギタ-とは簡潔に良く鳴るギタ-と要約出来るでしょう。鳴らないギタ-では自分の思った様に音が出てくれないのでやる気を削がれ、ましてや音楽表現どころではありません。逆に、良く鳴るギタ-は自ずと弾き手をその気にさせてくれ上達を促します。従って、最初から良い楽器を持った方が上達すると言うのは楽器商のセ-ルス文句である反面真理を突いています。やはりある程度以上の楽器は上達の必要条件です。ギタ-奏者は他のギタ-奏者にも、そして、良いギタ-にも刺激を受けて上達して行く事実は筆者自身の経験でもあります。
 そして、誰でも同じ代金を払うならより良いギタ-を求めたいと思うのは当然であり、一般的にはより高価であるほどより良いギタ-だと言って宜しいでしょう、一般的にはです。
 ただ、その代金を払う、良いギタ-を求めたいと思うギタ-消費者の側の判断基準はどうしても音量の場合が多い様です。つまり、音が大きいから良いギタ-だと言う考えです。考えと言いますか、ギタ-の音色を聞いて、まず音量が第一印象だから音量に耳を奪われて音量次第の結論を出してしまう訳ですが、音色を聞いて音量でギタ-を判断する!? 良く考えればおかしな話です。大盛だからこっちが美味しいと言っている様なものです(コルムナ326~328)。
 こう言うとき筆者の師匠故マヌエル・カーノ先生は一体どんな選択基準を持っていたのでしょう?

2010-12-20

452 中国が一番恐れていること 21-12-2010(火)

 先週水曜日8:30、フランスに隣接するスペイン・カタル-ニャ州ジロ-ナ県のある町で57才の男が朝食中の住建会社社長とその息子を猟銃で撃ち殺し、その足で近くの信用金庫に車で乗り付け行員2人も射殺。悪い奴ですが、犯行の動機は・・・。
 犯人はこの住建会社、つまり、この社長と息子から首になったばかりで、しかも、給料何ヶ月分か未払い。社長は周囲にワシも取引先から金払ってもらってないんだから、社員にも払える訳ないだろうと公言していたとか。滅茶苦茶ですが、生まれつき極めて身勝手な思考回路のスペイン人ならこれはむしろこの国では当たり前の横車の低い倫理観。文字通り空手形の銀行小切手を掴まされて信用金庫窓口で金がもらえず、遂にぶち切れて凶行に及んだと言う訳です。行員2人は余計だったとは思いますが、スペイン市民の意見は・・・。
 良くやった!? 社員に給料払わん奴が悪い。もっとこう言う事件がどんどん起こって住宅バブルで超え太った悪い奴らが殺されて欲しい!?
 なるほど、工事も仕事もなく自らも生活とロ-ン返済に追われて、ロ-ン半ばのマイホ-ムを差し押さえられて、本当は俺様も猟銃をぶっ放してやりたい、そうしなくとも、こんな事件がもっともっと起こって世の中滅茶苦茶になりゃあがれと思っているスペイン人も多いご時世でしょう。
 これが既に頻発する過激なデモやストに表れているのがギリシャやフランスにポルトガルにアイルランドなど金融危機諸国。この猟銃事件の類が文字通り引き金となってスペインもそうならないかスペインの政治家も恐れているはずです。
 にも拘らず今週67才定年の年金改革法案が国会で審議可決の見通しです。一騒ぎありそうです。

 明日のことを誇るな。一日の内に何が起こるかあなたは知らないからだ。-----或る昔の偉い人

 しかし、バブッて弾けて、国まで弾けるんじゃないかと世界で一番恐れているのは中国共産党指導部かも知れません。バブってはいますが、意地でも弾けさせる訳にはいかんでしょうね。国民が一斉蜂起でもしたら体制崩壊しかねません。
 この社長と息子も誇ったかどうかは知りませんが、身から出た自らの強欲の錆だと、犯人にむしろ同情的なのがスペインの世論です。確かに凶行はいけませんが、同情してもらえる内はまだましです。ポシゃってざまあ見やがれと言われそうな連中は我々の周囲にもいるかも知れませんが、無差別に満員の通学バスの中で包丁を振り回されても堪ったもんじゃありません。
 つい2日前も偽造大国中国の隠しカメラの特番が放映されました。一つ確実なことは、まさかあの連中が論語を読んでいるとは思えないことです。論語を読んでいないからこそ、だからこそ、あそこまでしゃあしゃあと偽造に銭ゲバ一色なのがまだ中国人の救いかも知れません。

426 良いギタ-から出る音色 21-12-2010(火)

 先日日本語情報センタ-来館者の前で筆者は一番安いサペリ合板ギタ-を弾いていました。結構鳴っていました。いえ、バカでかい音量でした。ですから、このギタ-は安物にしてはかなりいいギタ-だと我ながら納得しながら弾いていました。
 次に、最近筆者が良く弾いているフアン・ロマン・パディ-ジャ氏の1992年キュ-バ産マホガニ製ギタ-(非売品)を弾きました。筆者は弾き始めて一瞬不安に駆られました。直前まで弾いていたサペリ合板ギタ-の安物に比べて明らかに音が小さいのです。
 しかし、明らかに小さかったのは音量だけで、聞いていた来館者が即座に全然違うと言った一言で筆者自身も量より質の原則を再確認しました。
 それほど音質が全然違いました。意外と奏者自身は音色の質(音質)より音量の方が印象に残るとすれば、筆者もまだまだ甘い証拠です。
 ただ、実際遥かに高価な手工ギタ-のマホガニ製の方が量産のサペリ合板ギタ-に音量で劣っていたことも事実です。そう聞こえただけではなく、実際劣っていました。音量はです。しかし、聞く人に即座に全然違うと言わしめたのは音量ではなく、音質の歴然とした違いでした。
 音質に勝るギタ-の音色は、例え音量はなくとも、一音一音はっきり分離して、遠くまできれいに聞こえているものです。
 読者の皆さん、ギタ-の選択は最後は音質(音色)です。

2010-12-13

451 ズルして勝ってそのままズルズル 14-12-2010(火)

 中々カッコいいお姉さんです。1500~3000mのスペイン人中距離ランナ-第一人者のMarta Domínguez:マルタ・ドミンゲス選手。オリンピックでのメダルはありませんが、世界陸上やヨ-ロッパ陸上で優勝2回、準優勝2回。ジュニア時代には国際大会優勝数知れず。現在でもこの距離の各種目のスペイン女子記録保持者でもあり、著名人でもあるだけに・・・。
 先週12月9日ド-ピングで逮捕のニュ-スにはスペイン中がバカ負け。逮捕者はコ-チを初め14人。しかも、速く走りたいがために禁止薬物を摂取しただけではなく、同業者に手広く密売する卸問屋も兼業!? 麻薬の売人と同じです。いや、神聖なスポ-ツだからこそもっとタチが悪い、と正義には極めて甘いスペイン人が言うほどですから、これは余程ヒドイ事件です。
 警察によればスペイン史上3番目に大掛かりなド-ピング事件だそうですが、捜査はまだ始まったばかりで史上3番目。前回は競歩のオリンピック金メダル選手、前々回は自転車ロ-ドレ-スの大物選手が大量に捕まっています。今回も芋蔓式にまだまだ出て来そうな気配だそうです。
 また、もう20年ほど前でしょうか。BBCのドキュメンタリ-である東ドイツの元水泳女子選手のインタビュ-がありました。確かメダルを取った選手じゃなかったかと思いますが、段々胸が小さくなって、髭が生えて来て、男より女の方が好きになったとか!? 筋力増強のために男性ホルモンを打たれていた様です。道理であの当時西ドイツより東ドイツの方が強かったはずですが、そこまでしてでも、せめてスポ-ツ分野だけでも西側に勝つのが当時の東側共産圏の狂気の方針だったのでしょう。

 私達は真理に逆らっては何も出来ず、真理のためなら何でも出来るのです。-----或る昔の偉い人

 しかし、西側資本主義社会のド-ピングはこの事件でも分かる様に金と強欲でもっと狂気です。ニュ-スによればスペインの警察は事件の裏付けにマルタ・ドミンゲス選手の経済的能力を遥かに超えた銀行口座の入金状況を把握していたそうです。そんなすぐ判る銀行口座なんかに裏金入れとくなっちゅ~んですよね。足は速いが、あんまり利口じゃなかったのかも!?
 私達は何か一時的に出来たつもりで有頂天になっても、それが遅かれ早かれガラガラ根元から崩れ去るなら、結局真理に逆らっていたことになります。そんな実例に満ち満ちているのが圧倒的大多数の人間の人生であり、世の中の縮図でもあることに国境はありません。今後の芋蔓のニュ-スが楽しみです。

425 コルムナは指から良いギタ-へ歌心 14-12-2010(火)

 スペインギタ-週間コルムナではあくまで歌心をベ-スに左手右手の指について、如何に奏者が指を動かすのではなく、歌心に指を乗せて、いかに指にギタ-を弾いてもうらうか、つまり、ギタ-上達の過程は指の鍛錬ではなく、歌心で指のしがらみを解いて勝手に動いてもらうことだとコルムナしました(コルムナ1315)。

 指について一段落したところで、次に楽器としての良い(スペイン)ギタ-についてコルムナして来ました(同316 424)。
 機械乾燥より自然乾燥。音量より音質。音質は新品より古いギタ-・・・とあくまで音の観点からコルムナした後・・・、

それならギタ-は合板より単板。量産より手工。
量産でも今日安いのは各社中国製が常識で今後ラベル以外100%中国製スペインギタ-はより顕著になって行くであろうこと。
有名製作家の名前のブランドギタ-も中級品以上は国産だが、その圧倒的大多数は100%国内他社への委託品であること。
手工ギタ-も誠意ある個人製作家なら100%その製作家の作品だが、有名製作家の名前の手工ギタ-なら影武者ギタ-が日本では160万円(同393)もすることなど。

 良いギタ-から段々ギタ-の出所の話になりましたが、ロクでもないギタ-を見破るのも良いギタ-捜しの反面教師と思って下さい。
 要するにギタ-を弾くのも、捜すのも、結局は歌心次第。逆に歌心のなさがとんでもギタ-が世界に蔓延する元凶とも言えます。
 絵は絵心・・・。絵心のない人に決して絵は描けないとすれば、ギタ-は良くも悪くも総ての面で歌心に帰着すると結論出来ます。

 以上今までのコルムナの大まかな流れでしたが、それでは良いギタ-からは一体どんな音が出るのでしょう? 余り良くないギタ-とも比較しながらコルムナして行きましょう。

2010-12-06

450 スペインでドイツとポルトガル 07-12-2010(火)

 先週水曜日ポルトガル経由で若い日本人女性旅行者がやって来ました。それ自体珍しくも何ともありませんが、首都リスボンを初め国中結構物乞いが多く、やたらシャッタ-街が多かったそうです。ギリシャ&アイルランドの次はポルトガルで決まりみたいですね。その次は腐ってもG7のイタリアではないとすれば、後はスペインしかありませんが・・・。
 翌日木曜日、今度はドイツのドュッセルドルフの日本企業の駐在員の男性がやって来ました。前日のポルトガルの話を引き合いにドイツの景気を訊いたところ、7%と言われる失業者も実質はそれ以下で、不況と言われる割には産業界は良好だと言うことでした、中国のおかげで(これが危なかったりして!?)。
 何か僅か2日間でEU呉越同舟雑居ビルの縮図を見せ突けられた様な気がします。
 結局南ヨ-ロッパぐうたら同盟(ギリシャ&スペイン&イタリア&ポルトガル)+1のアイルランド(先週のコルムナ)が寄ってタカッてもドイツ一国に遠く及ばないどころかドイツに金貸してもらわなければ生き残れないEUのお荷物だと言う現実がユ-ロ導入後8年で水面下から水面に汚泥の様に浮かび上がって来たことになります。
 ドイツ国民は何であんな連中に我々の税金をくれてやるんだと怒っているそうですが、アメリカに次いでIMF第2の出資国日本にとっても人事じゃありません。

 口が食物の味を知る様に、耳はことばを聞き分けないだろうか。-----或る昔の偉い人

 スペインは来年(来月)早々タバコなど増税ラッシュに国営企業の民営化ラッシュに各セクタ-は財源削減ラッシュ。来年地方選挙、再来年総選挙ですから余り派手にそう言わないだけで、ラッシュアワ-にしなければギリシャ&アイルランド&ポルトガルの次は我が身だとスペインの政治家は良く分かっていますし、そうなる前にこうしろとEUとIMFから突き上げられている訳なのです。
 おまけに年明の国会で年金制度見直し案が強引に可決されるとのこと。つまり、現在65才が67才定年となります。当然組合側は黙ってはいませんから、またストが頻発しそうですが(同441)、それもこれも何年も先に年金の財源があればの話です。
 口に持って行く食物のことを考えるその前に、耳でしっかり知恵のことばを聞き分けていれば、貪欲によって引き起こされる多くの悲劇を未然に防げるのは人生の多くの分野も、そして、経済も例外ではないことは世界共通の教訓です。遅きに失しなければですが・・・。

424 メ-カ-の名前で困惑スペインギタ-かな①~④総括(3) 07-12-2010(火)

 最後にもう一度先週&先々週のメ-カ-の名前で消費者を困惑させるスペインギタ-4パタ-ンの一覧表を載せて総括します。

 ①誠意ある個人製作家の場合(同379 &380
 ②影武者ギタ-の場合同381~397)
 ③中国製スペインギタ-の場合(同398~413)
 ④ラベルとは違う製作所の正真正銘スペインギタ-の場合(同414~421)

 結局①以外は有名ブランドで極めて歪んだ付加価値を付けてなるべく売上を伸ばす、この一語に尽きます。 
 我々は資本主義社会に蠢いていますので、それが悪いと筆者は必ずしもコルムナしたのではありません。我々は資本主義社会に蠢いている以上、むしろそれはある程度しなければならないことです。ただ・・・。
 
 ②スペイン人有名製作家の名前のラベルの手工ギタ-で製作者が全く別人の影武者なら、せめてそのラベルの隅に本当の製作者のサインを入れとけよ。
 ③スペイン人有名製作家の名前のラベルの100%中国製量産ギタ-なら、せめてギタ-の内側の見えない隅にでもMade in Chinaと書いとけよ。
 ④スペイン人有名製作家の名前のラベルで100%スペイン国内の量産工場に依託したギタ-なら、せめてギタ-の内側の隅にでも何々製作所と書いとけよ

と言うモラルの問題です。②③④いずれもラベルの有名スペイン人製作家は指一本触れていないのに(サインは本物だったりしますが)、消費者はその有名スペイン人製作家の作品だと思わせることはモラルに反します。反さないと思っている業界人が多い様です。スペインも日本もです。
 しかも、この傾向は世界経済の沈滞化に従って、残念ながら、ますます臆面もなく蔓延って行くことは間違いありません。
 今後スペインギタ-を爪弾く日本の愛好者の方々にスペインギタ-の出所を今一度健全に疑っていただくための一年間のコルムナでした。