2008-01-28

277 各指の独立性を欠けば出来ないアルペジオ 29-01-2008(火)

 故マヌエル・カ-ノ先生はアルペジオの名手で、速くなればなるほど調子に乗って音量も出ていました。正にimaを自由自在に操っていた印象しか残っていません。一体どうすれば少しでもあの境地に近づくことが出来るのでしょう? 何週かに渡ってコルムナして行きましょう。
 さて、どんな名人も自分の苦労しなかったことは生徒に経験として伝えることは出来ません。どうも先生はアルペジオは得意中の得意だったこともあり、大した苦労はしなかった様です。従って、生徒達への説明も指の表向きのことばかりで、今あの頃のことを思い出してもその秘訣については伝え切れていなかったのではないかと思います。と言うか、先生自体が自然に身に付けたもの故にその秘訣に関しては本人も意識さえしていなかったと言うべきでしょう。意識していなければ他人に伝えることさえ思い付きもしなかったのも頷けます。その秘訣とは・・・。
 読者も大先生からギタ-仲間に至るまで色々な人からアドバイスを聞く時、それが指だけについてか、或いは指の土台についてか、どちらについて言っているのか良く聞き分けることが時としてそのアドバイス以上に大切です。多くの場合、上級者に至るまで口にするアドバイスは指に関してだけと言うことが大半な様な気がします。そして、多くの場合それが聞き手にとって実を結ばないのは指の土台がぶれていることを度外視して指の正統派理論ばかり聞かされるからです。このことに言及する上級者もまた少ないのではないでしょうか? それはカ-ノ先生同様、本人がそれについて苦労しなかった故に気付きもしていないと言うことなのでしょう。つまり、上手い人ほど意識することさえなく指の土台がぶれていないから指のことだけ気にしていれば自然に上達するが、いつまで経っても上達しない人は指の土台がぶれている自覚症状はなくても実際ぶれているので、どんなに有益な指のアドバイスを聞いたところで何年経ってもぶれた土台の上には何も建て上げられない。これが症状の根本原因です。指は根本ではありません。
 指の土台とは先週までの言葉で言い換えれば“軸”。歌心と言う情緒的軸と手腕の肉体的軸です。昔からの読者はご存知でしょうが、筆者は基礎を常に肉体的基礎と情緒的基礎に分けてコルムナして来ました。
 それはアルペジオも同じこと。手腕が微動していては速いアルペジオは無理ですし、速くなればなるほど音が小さくなって来ます。それは究極のところ歌心と言う情緒的軸、情緒的基礎のぶれに起因します。これを正さなければいくら世界一正しい指のアドバイスを聞いてやってみても右手各指の独立性など養われては来ません。ima、そして、pもです。

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